7/05/2010

語学留学の理解

言いたいことを要約すると、語学留学の目的は大きく2つに分けられ、語学学習のモチベーションを保つことと、外国に住むことそれ自体だ、ということです。さらに踏み込めば、語学留学なんてのは語学習得に「直接には」大した効果はない、ってことです。語学留学信仰批判、語学留学の代償、本当の目的・効用、の順で進めていきます。

《語学留学信仰批判》

こういうことを考える問題意識は、語学留学に対する信仰への違和感に由来しています。「語学留学かぁ、きっとペラペラになるんだろうね」みたいに、なーんとなく高評価されがちではないでしょうか。。語学留学を正確に理解することで、このなーんとなくの高評価を見直してみたいと思います。さて、語学留学で言語をペラペラ話せるようになるでしょうか。それはなぜでしょうか。外国語に囲まれるから?ネイティブに教わるから?

外国語に囲まれるのが良いように思えるのは、単純にインプット量が増えるからですかね。これに対しては2方向から反論できると思います。第一に、確かにインプット量は増えますが、そのうち語学習得に寄与するのはわずかです。なぜならインプット練習としてインプットの量が意味を持つのは内容を理解している時だけです。街中で聞こえる会話やテレビから聞こえる外国語の大部分を理解するのは困難です。たとえそれが英語で、TOEIC満点であってもです。内容を理解できないインプットが増えたところで語学習得には寄与しません。

第二に、インプット量の確保なら日本国内で可能です。スロベニア語などは別にしても(失礼)主要言語なら親切にも日本語で書かれた教材が豊富にありますし、生きた外国語(笑)ならインターネット上に掃いて捨てるほどあります。

ネイティブに教わるから??ネイティブが役立つのは、文法書には載せられないほど細かい「表現として自然」などのレベルの文法知識を持っている点においてのみではないでしょうか。その他の点は文法書や日本人の先生で十分です。逆に、日本語を話せない先生に教わるのは非効率ですね。母国語での説明が一番理解しやすいので。

《語学留学の代償》

このように語学習得に直接には寄与しないにも関わらず、語学留学は高い代償を必要とします。まず単純に留学費用です。さらに、日本にいたらできたこと、例えば大学教育を受けるとか仕事をして収入を得るとか、ができません。仕事を辞めてきてる人を見ると、その代償は大きいなぁと感じさせられます。 では、そんな代償を払ってまで行う、語学留学の正当な効用とは何でしょうか。

《本当の目的・効用》

それは語学学習のモチベーションを保つことと、外国に住むことそれ自体ではないかと思います。 モチベーションの維持としては、第一に、語学留学すると(留学先での)生活の意味がはっきりします。言語を習得することです。日本で生活していると、生活(または人生)の目的は多様です。例えば他科目の勉強、研究、仕事に時間を割かねばなりません。外国語習得なんてどれだけ優先順位の低い目的でしょうか。さらに語学学習を妨げる誘惑も豊富です。
第二に、外国語を使う機会が比較的簡単に得られます。例えば外国語を話す相手を日本で探すのは難しく、それだけで心理的に大きなハードルになり、モチベーションを消費してしまいます。

また、外国に住むことは、海外経験として貴重です。他国人に囲まれることで、日本人としての自覚とか、他国人との付き合いの難しさとか、自分と異なる行動様式の認識とか、が得られるでしょう。 話が逸れますが、外国に住みたい動機として多少ネガティブだと思うのは、外国に住みたいという欲求の満足させるという動機です。ただ、それで本人が幸せならいいんじゃないかとは思います。もっとネガティブだと思う動機は、日本での生活が嫌でそこからの逃亡を果たすことが目的である場合です。日本生活からの逃亡がよくないと思うのは、嫌いな環境から逃げて向かった先が必ずしも嫌いでない(心地よい)環境であるとは限らないからです。

《まとめ》

そういうわけで、語学留学の理解としては、日本での機会損失と高い金を代償に、海外経験(または海外居住欲の満足)や語学学習のモチベーションを買っている、というのが正確・正当だと思います。学生は機会損失が比較的少なそうですし、海外経験は若いうちがいいと言いますから、大学の長期休暇の過ごし方としてはそれなりに妥当だと思います。そういえばバカンスで語学学校に来る人が他国人に多いことは、「長期休暇の過ごし方としては妥当」という評価とよく一致しますね。

こんなこと考えるのも語学留学してるからで、もともと語学留学を疑問視していた僕が語学留学してるのはヴルカヌス・イン・ヨーロッパに参加したからです。こうやって考えるきっかけを得られたという点で、自分単独では決して選択しなかった経験を「させられる」のも悪くないものですね。

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